ストリップららばい 桜ともえ

大衆的娯楽と考えられている「ストリップ」。踊り子と呼ばれる女性達が音楽に合わせて服を脱いでいくさまを見せる出し物であり、風俗産業の一種とも呼ばれている。男性なら一度くらいは足を運びたいと思っていても、一度もストリップという踊り小屋に足を踏み入れたこともない輩も少なくはないはず・・・。
元踊り子である桜ともえが、踊り子の視点からそのストリップの世界をご案内。昔、足を運んでいた常連の人もお立ち寄りください。

■第8話 引退 NEW!
■第7話 チョット脱線
■第6話 従業員との思い出
■第5話 15分
■第4話 お客
■第3話 女の園
■第2話 ポラロイド
■第1話 はじめまして

2012年09月25日

引退

この二文字をしっかり考えるようになったのには自分の中に明確な理由があったからかもしれません。
理由というより、夢、と言った方が正しいかな…
踊り子が引退する時は様々な理由がつきものです。
身体の故障、年齢、親バレ、異性問題etc
華々しいデビューを飾った後にやがて必ず訪れる引退の日。

ここからは私自身のケースになりますが、ちょっとした出来事をきっかけに真剣に引退を考えたのです。
当時の心境を振り返りながら書いていきたいと思います。

踊り子時代の私の夢…
それは「結婚して家庭を築く」というものでした。

ストリップを世に広めたいとか、世界の舞台にチャレンジしたいとか、バーレスクの講師になりたいとか、漠然とした夢はもちろんありましたが、自分を一人の女性として育ててくれた両親や末っ子の私を可愛がってくれた兄弟の事を思うと、その道へ踏み出す勇気が私には足りなかったように感じます。
もしかすると怖かったのかもしれません。

だからと言って 「結婚して…」という方向に逃げたのかと言うとそれもまた違い、両親の様な素敵な家庭を築きたいという夢を、幼少からとても大きく抱いていました。

先ずこの選びようのない二つの夢のどちらを選択するかで葛藤する事になります。

デビュー後、踊り子生活にある程度慣れてくるとステージに上がる度に踊りや表現への情熱みたいなものが生まれてきました。
スポットライトに照らされ、何とも言えない快感が身体中を駆け巡る。
客席からの歓声や拍手が、緊張から自信へと変わってゆく。
劇場の外には大きく貼り出された自分のポスター。
スポーツ紙の記者や雑誌の記者が取材に訪れる日々。
誕生日や周年記念には、楽屋に飾りきれない程の花束が届く…。

なんかもう、ある意味その環境が当たり前になり中毒になっていくのが自分でも分かりました。
                                                                                                   
この世界に居れば踊り子同士多少のいざこざはあっても、そこは目を瞑れば消えて無くなり、煌びやかな時間がずっと続いていく…と。

21、2才の頃ですから、当然ながら「勘違い」をしている訳です。
この勘違いが現実であり、全てなんだと思ってしまう。
若いって怖いですね。(笑)

そんな時、都内の劇場で大御所、大ベテランのお姐さんと一緒になる機会がありました。

年齢で言ったら50歳に近い40代、でも私が思っている50歳前後の女性像とはまるで違い、艶やかで大人の色気があって上品で…
近寄りがたいオーラがあるのにとても気さくで優しい。
「将来こんな女性になりたい!」と誰もが感じる程、当に憧れの対象。

が、お客の反応は全く違っていたんです。

「オバサン、いくら化粧したって無駄無駄」
「20年前は綺麗だったよな〜」

「オッパイ下がっちゃってるじゃん」
「ポラなんか売ってないでさー、早く引っ込んでよ」

踊り終え、ポラの時間になった途端客席から姐さんに向かって飛び交う声。

 
舞台袖で出番を待つ私は、これが現実なのかと耳を疑いました。
あんなに応援してくれているお客が、大御所の姐さんに向かってそんな言い方するなんて!
アンタ達は何をしに来たんだ!
ヒドい、怒り、憤り、様々な気持ちが次々に湧き上がって苛立ちを覚えました。
踊り子ってもっと高貴なものじゃないの?

姐さんは「いつもの事よ」と言って相手にしませんでしたが、「本当に気にしてないの?」
「それとも気にしてない素振りをしているの?」
私はそんな風に思いました。

そしてその苛立ちは時間が経つにつれ虚しさへと変わっていきました。

今落ち着いて考えると、あの時こういう場面を目の当たりにした事が、今後の踊り子人生を考えるきっかけになったのは紛れもない事実です。

「勘違い」からくる一時の感情で夢を叶えられる程、人生はそう甘いものではありませんよね。

この一件以来、私にとって本当に大切なものは何なのか、自分なりに良く考えるようになりました。

もし踊り子を続けていく道を選んだなら、いつの日か必ず両親に伝えなくてはいけない日がくるだろう…。
それがもし私自身の口からではなく他人の口からだとしたら…
どれ程の衝撃を受けるだろう…
言うタイミングがほんの少しズレただけで、私は大切な人を悲しませてしまうかもしれない…

お客だって歳を重ねた自分など求めてはいないのかもしれない。
私がもし同じ事を言われたら、どうやって対応するんだろう?
やっぱり相手にしない、のかな…
気にしない、なんて出来るのかな。

最悪なケースを、たくさんの「もしも」で並べてみました。
最高なシナリオは「勘違い」時代に度々思い描いてたから今更想像しなくてもいいや…と思いながら。

そんな事をしていたら、いつの間にか今の環境は当たり前ではなくて「特別」で、現況に「感謝」出来るようになり、それと同時にこれがいつまでも続いていく訳ではない事に気づかされ、心境の中に一つの区切りが見えてきました。

そして私は「引退」を真剣に身近なものとして考え始めました。


子供ではないけれど、自分が思っている程周りから見たら大人じゃないんだ。
物事を将来性も視野に含めて考えてみよう。
そういう事に気づかされた22歳の夏でした。

次回は…引退後の生活についてお話しします。
posted by 桜ともえ at 22:31| ストリップららばい