ストリップららばい 桜ともえ

大衆的娯楽と考えられている「ストリップ」。踊り子と呼ばれる女性達が音楽に合わせて服を脱いでいくさまを見せる出し物であり、風俗産業の一種とも呼ばれている。男性なら一度くらいは足を運びたいと思っていても、一度もストリップという踊り小屋に足を踏み入れたこともない輩も少なくはないはず・・・。
元踊り子である桜ともえが、踊り子の視点からそのストリップの世界をご案内。昔、足を運んでいた常連の人もお立ち寄りください。

■第8話 引退 NEW!
■第7話 チョット脱線
■第6話 従業員との思い出
■第5話 15分
■第4話 お客
■第3話 女の園
■第2話 ポラロイド
■第1話 はじめまして

2012年02月05日

第6話 従業員との思い出

今まで踊り子にスポットを当ててきましたが、ストリップ劇場の従業員さんって少し興味をそそられませんか?

どんな人がなるんだろう、、、?
一体その仕事の内容は?etc
今回は縁の下の力持ち的存在でもある『従業員』さんについてお話します。


まずは、、、何から説明すれば良いのか迷うほど彼らの仕事は多岐に渡っていました。

専ら雑用ですが、清掃・呼び込み  ・切符切り・照明・音響、お客さんとのコミュニケーション、踊り子からのクレーム対応、それから用心棒、、、数えればキリがありません。

とにかく何でもやるし何でもやらされます。

劇場一の働き者と言っても過言ではありません。

年齢で言うと、30代の従業員は若手です。
40代以上の人が結構多かったかな、、、。
中長期で働いています。

キャバクラなんかでは、20代のおにぃちゃんが割りと短期間で働いていますが、ストリップ劇場は長く留まるタイプが多かったように思います。


一日の始まりですが、開演前のステージ&客席清掃です。
ステージはしっかり拭かないと滑ってしまい、踊り子から文句が飛び交います。
なのでモップと雑巾で念入りに掃除をしていました。

スポットライトに照らされる私たちの身体は想像以上に汗をかきます。
ヒールの高いダンスシューズで踊るので身体から流れ落ちた汗を踏むと
滑って転倒し、時には捻挫というケースもあります。
だからステージを掃除する従業員は責任重大でした。

念入りに掃除をするのにもちゃんとした理由があるんです。

私たち踊り子が共同で使うトイレやお風呂場も、毎朝彼らがピカピカに磨いてくれました。

大した事ではないかもしれない、けれどその光景はどこか私をホッとさせてくれていたんです。

従業員は100%に近い率で金銭面に困っている人がなっていたように思います。
彼らだけでなく踊り子もそうだったっけ、、、。
身内や自身に借金がある、知り合いの(従業員同士)連帯保証人になってしまったetc…

でも皆とても良い人でした。
もちろん、確実にそうじゃない人もいましたが、、、(笑)

彼らのほとんどが劇場近くのおんぼろアパート寮に入り、朝から晩まで缶詰めで働く、今考えると休日はあったのかな?

従業員が場内でのんびり休んでいる姿を、私は見た事がありません。

それぞれの劇場に3名程、従業員がいます。

@劇場の外に立つ人→呼び込みやお客さんとのコミュニケーション
A照明、音響
Bステージ袖で待機→踊り子からの照明や音響に対するクレームを即座に内線で担当者に連絡etc

それぞれの持ち場を交代で行っていました。

お客さん用に食堂がある地方劇場では、簡単なメニューですがカレーや牛丼など、合間を縫って作っていました。

踊り子のポスターが所狭しと貼ってある宣伝カーで、劇場周辺を走る事もありました。

神業です。

そして一日の最後は閉演後の清掃に翌日の開演準備、常に何かしらの仕事に追われていた事を記憶しています。

清掃だけで終わり、ではありません。

踊り子のストレス発散のはけ口であったのも事実です。

青い照明に照らされベット曲を踊り終えた姐さんが、出番後、凄い形相で従業員に詰め寄りました。
「アンタさ、何が楽しくてあの照明にしたの?
アタシの身体が死体みたいじゃない。
次またやったらタダじゃ済まないよ。」

これは確かに従業員のミスかもしれない、けど、それを上回る程姐さんは声を荒げていました。

それから曲毎の音響の大きさ、これにも姐さんたちは容赦無く注文をつけていました。

舞台袖で出番を待つ姐さんが煙草をくわえると、スグに火を点ける、反応が遅い従業員はヒールで蹴られる。
そんな光景を私は毎日見ていました。

一言で言ってしまうなら、従業員=使用人
です。

だから20代の若者には、どう考えても務まりません。

強い意思をもってないと、いや、この仕事しかもう後がない、、、という崖っぷちの立場じゃないと務まらないのかもしれません。


ここでちょっと、彼らとの思い出を綴ってみようかな。

私が現役の頃、閉演後のステージを借りて新作の振り確認をした事がありました。
終電時間を逃してしまい、急遽楽屋に泊めてもらう事になったんです。
帰ろうとしていた従業員さんが、「あれ、桜さん泊まるんですか?一人で劇場に泊まるのは危ないから僕も一緒に泊まります。」
と言って戻って来てくれました。

私が「じゃあ今日は楽屋の端と端で寝ればいいよね。」
と提案すると、
「いや、それだけは出来ないでんですよ、社長に怒られますから。」
と即答で返ってきました。
「え?何で?私が黙ってれば、寝るくらい大丈夫なんじゃない?
だって端と端だよ(笑)」
そう言っても彼は首を縦に振りません。

あまりしつこく誘っても悪いし、「従業員」と「踊り子」という立場もある手前、どこで休むのかは彼に任せる事にしました。

その日の深夜、昼間の賑わいとは違って静まり返る客席を相手に集中力を高めて振り付けを確認し楽屋に戻ると、布団が一組だけ敷いてあったんです。

いくら決まり事とは言え、律儀な人だな、、、と感じた事を今でも覚えています。

更に彼は、楽屋に夜食と飲み物を用意して私を待っていてくれました。

彼「お疲れ様でした、寿司でもどうですか?ってコンビニのなんですけど。」
桜「えー、ありがとう!お言葉に甘えていただこっかなー。もう遅いから、先に休んでても構わないのに。」
彼「いや、僕も食べたかったんで。もし良かったらつまんでください。
飲み物も買ってあるんです。」

私には嬉しいサプライズでした。

そう言えば仕事以外で従業員と話す機会なんて今まで無かったような。
ふとそんな気持ちになりました。

彼はとても物静かでしたが大柄で、顔立ちはパッと見少し強面な雰囲気がありました。

自分の生い立ちや家族のこと、恋愛観、そしてこの仕事について、、、
少しづつ、ゆっくりな口調で話してくれました。

それは踊り子と、どこか同じ悩みだったように思います。

なかなか胸を張ってこの職業を打ち明けられない事、
仕事が忙しく、彼女に会う時間をつくれないでいる事、
オンナ好きなんじゃないかと疑われる事、
一体いつまでこの仕事を続けるのか、、、etc

私だけかもしれないけど、その時間は特別なモノに感じられ、様々な感情が次から次へと湧き上がってきました。

従業員も踊り子も、みんなみんな大なり小なり悩みを抱えています。
そりゃそうです、この道を精一杯生きているんだから。


従業員がいないと、私たちの仕事は成り立ちません。

踊り子が主役ならば従業員は脇役。

脇役が居なければ、主役は光る事が出来ません。

その事にもっと早く気づいていたら「いつもありがとう」の一言くらい伝えられたのにな。


もしも皆さんがストリップを観に行く機会があったら、ぜひぜひ従業員さんにも注目してくださいね。

posted by 桜ともえ at 01:20| ストリップららばい