ストリップららばい 桜ともえ

大衆的娯楽と考えられている「ストリップ」。踊り子と呼ばれる女性達が音楽に合わせて服を脱いでいくさまを見せる出し物であり、風俗産業の一種とも呼ばれている。男性なら一度くらいは足を運びたいと思っていても、一度もストリップという踊り小屋に足を踏み入れたこともない輩も少なくはないはず・・・。
元踊り子である桜ともえが、踊り子の視点からそのストリップの世界をご案内。昔、足を運んでいた常連の人もお立ち寄りください。

■第8話 引退 NEW!
■第7話 チョット脱線
■第6話 従業員との思い出
■第5話 15分
■第4話 お客
■第3話 女の園
■第2話 ポラロイド
■第1話 はじめまして

2012年02月05日

第3話 女の園

今回のテーマは「楽屋」
踊り子の楽屋は外の世界からは見る事が出来ないだけに、興味がありますよね。
人生の縮図とも言える楽屋の中を、のぞいてみましょう・・・

お互いの呼び方ですが私たち踊り子は先輩を「姐さん」と呼んでいます。
年齢は全く関係なく、デビューが早い方が姐さんなんです。
字から想像すると、少々怖い様な気もします。
悪さをしなければ大丈夫です。
意味深ですが、普通に過ごしていれば問題なくお付き合いできます。

続いて楽屋の間取りをちょっと説明します・・・
劇場にもよりますが、約6畳の大部屋になります。
ここに7人の踊り子が、10日間寝食を共にします。
かなりの狭さだということがすぐに分かるでしょう。
地方では個室アリの劇場もありますが、関東地区は大体大部屋です。
楽屋が2つあって、4人部屋、3人部屋と分かれている場合もありました。

トイレ・お風呂は共同で使用し、大阪の劇場では近くの銭湯に無料で入れました。
「○○劇場です」と言うと、受付のおじちゃんが「はいよ〜、おつかれさんね〜」
と言って顔パスで通してくれます。
慣れないと違和感がありますが。

それと、楽屋は寝具完備ですが時代の流れを感じるせんべい布団です。
初日にシーツと枕カバーを受け取ります。
シーツは自分で洗濯します。
ふかふかのお布団で寝た事は一度もありません。
楽屋で寝泊りするのがどうしてもイヤな場合、近くのビジネスホテルを実費でとります。安くて1泊4千円。×10日ですからほとんどみんな楽屋に泊まっていました。

それでは、楽屋でまず初日にする事は・・・
「挨拶」です。
どんな仕事でも挨拶は基本中の基本ですよね。
踊り子もそうです。
踊り子社会には長い歴史があるので、この「挨拶」にもルールがありました。

立って挨拶をすると、ソッコー怒られてしまいます。
姐さんの前できちんと正座をし、
「○○劇場所属の○○と申します。10日間宜しくお願い致します。」と
一人一人にご挨拶。

踊り子は自分の出番前の姐さんの衣裳を片付けるので、「1曲目○分、2曲目○分
ベッド○分、○曲目で袖にはけます・・・」
というような曲や衣裳の確認も、挨拶と一緒に必ずしていました。
今はもう少しゆるい挨拶かもしれませんが、私が現役の頃はまだまだ
厳しい姐さんがたくさんいました。

この挨拶さえきちんと出来れば、その後はめちゃくちゃ可愛がってもらえます。
見た目ほど怖い世界ではありません。

私はデビュー時に大御所の姐さんから楽屋で着る部屋着を頂きました。
引退した今でも大切に保管してあります。
いや、怖くて捨てられません・・・(笑) 挨拶と並行して、鏡前(化粧前)を作ります。
平たく分かりやすく言うなら、デパートのトイレのパウダールームのような感じ。
でも実際楽屋は6畳程のスペースしかないため、1人あたりの鏡前はノートパソコン
1台分の幅でした。

どこの劇場も楽屋は畳、鏡前には座布団が1枚、こんな情景です。
それが7人分、横にズラリと並んでいます。
その光景だけでも独特の雰囲気、現実離れした空気がありました。
ここで女同士の喧嘩が始まったら・・・なんて、考えただけで鳥肌がたちます。

で、鏡前をどうするのかと言うと、メイクセット・ドライヤー・香水・汗を抑える用の
カシミヤティッシュ・サイン用のペン・色紙に貼るキラキラシールetcを並べ、
スムーズにメイクや食事をとれるようにしておきます。

出番後の仮眠も、この僅かなスペースでしていました。
これが済んだらビデオカメラで振り付けをチェックし、ストレッチを行い体をほぐし、
洗浄へと向かいます。 「洗浄って・・・?」と思いますよね。
洗浄とはこの業界でシャワーを浴びて特に下半身を念入りに洗うことを指します。
最終的に裸になり更に脚を開いたりするので、この洗浄、バカにできないんです。
実際姐さんから洗い方も教わりました・・・
頑張って文章にすると卑猥感が出てしまうので割愛させていただきます・・・。
ごめんなさい。

出番前と出番後、1日、計8回は洗浄をします。
洗いすぎには要注意です。

初日の出番前はこのように慌ただしく過ぎていきます。

そして本題・・・私たちが楽屋で話す内容とは・・・
きわどい話ですが、「整形」情報はハンパなく飛び交っていました。
目や鼻、プチ整形レベルの踊り子は珍しくありません。
多いのはダントツで豊胸でした。
そのためか、どこの病院がうまいヘタ、どこの先生が良い悪いという会話は
常にしていました。

実際、挨拶代わりに姐さんから「アンタの顔、どこの病院?」とイヤミを言われていた
踊り子がいたんです。
整形したとは一言も言ってないのに・・・怖い怖い。

「整形したはいいけど、顔がつっぱってうまく笑えないよ。」
とか「CカップからFカップに豊胸したけど肌の馴染みが良くない・・・」
と、一般ではなかなか口に出せない悩みも、楽屋ではごく普通の会話となっていました。

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この手の話題も尽きる事はありません。
踊り子同士同じオトコを好きになったとか奪ったとか。
生々しいです。
ここで一つ、実際に起きたハプニングをお話します。
彼氏と同棲している踊り子の部屋に、振付師の先生(女)がやってきました。
1日2時間のレッスンが、3日続きました。
で、何事もなく振り付けの先生は帰ります。
数日後、姐さんが自宅に戻ると・・・
カレシと先生がベッドでお取り込み中・・・

怒る気にはならなかったそうで。
「やることハヤッ」彼女はそう思ったのでした。

この程度の話はよくあるハプニング(笑)です。
決して目くじらをたてるような事ではありません。

踊り子のネットワークは非常に早く、驚くものがあります。

あと、他の踊り子同士、選曲がかぶっていないかものすごく敏感です。
「自分が一番キレイなんだ」という気持ちでプライドをもってステージに立つので、
出来ればみんな違う曲を使いたいのです。
実体験ですが、この私も中堅の姐さんと曲が重なってしまった事が、過去に1度だけ
ありました・・・
忘れもしない「ムーランルージュ」
たまに耳にすると、今でも冷や汗が出てきます。

出番後、ふくれた姐さんが「アンタ曲変えてよ。アタシの曲なんだけど。」と一言。
「出来ません・・・」
私がそう返すと姐さんは「じゃあ踊らないで」と攻撃モード全開になってしまいました。
楽屋は同じなので、そこから10日間、いじめられた事を思い出します。
同じ曲でも振り付けは違うし、お客さんも楽しめると思うんだけど・・・。
でも彼女は新人の私と同じ曲を使うことが許せなかったのかもしれません。

みんな仲良くしようよ〜・・・いつもそんな事を思っていました。
より美しくなりたい、綺麗に魅せたい、その強い気持ちは分かるんですが、
オンナの世界なので小さなバトルはたくさんありました。

楽屋からは少し脱線しますが、デビュー間もない踊り子は姐さんのステージを見て
雰囲気やポーズを盗みます。
これを「お勉強」と呼んでいます。
見学してみたい姐さんのところへ行き、「○日目、○回目のステージをお勉強させてください。」と土下座します。
オッケーが出ると、客席後方から見学。
ステージに上がっている姐さんの目線にかからない場所を探し、立ってお勉強します。
ステージ終了後は楽屋で姐さんに「どうもありがとうございました。」と再び土下座。
感想を告げ、アドバイスを頂きます。
立ったままお礼を言ってはいけません。
「そんな失礼なことがあるか!」と怒られてしまいます。
上下関係には特に厳しい社会でした。

ざっと綴ってきましたが、何となく想像できましたか?
こんな踊り子を熱心に支えてくれるのがお客さんという存在です。

次回は「客」について書いていきたいと思います。 
posted by 桜ともえ at 01:18| ストリップららばい